公開日: 2026年04月10日
最終更新日: 2026年04月10日
オフィス移転時の就業規則変更|労基署対応・同意・トラブル回避まで解説
※本記事は賃貸オフィス実務16年・累計1,000件以上の契約実績を持つ専門家が監修しています。
- オフィス移転時に就業規則の変更が必要な箇所と理由
- 勤務場所・通勤手当・始業終業時刻の変更手順
- 労働者代表の同意取得と労働基準監督署への届出方法
- 従業員への周知義務と不利益変更に該当するケース
オフィス移転で就業規則の変更が必要な理由
就業規則は「常時10名以上の労働者を使用する事業場」において作成・届出が義務付けられており(労働基準法第89条)、記載内容に事実と相違が生じた場合は速やかに変更・再届出が求められます。
オフィス移転は勤務場所の変更を伴うため、就業規則に「就業場所」が記載されている場合は必ず変更が必要です。あわせて通勤手当の上限額や支給ルールも見直す機会となります。変更手続きを怠ると、労働基準監督署の是正指導対象になる可能性があることを当社実務経験からも確認しています。
変更が必要な3つの項目
① 就業場所(勤務場所)
就業規則の「就業場所」欄に旧オフィスの住所が明記されている場合、新住所への書き換えが必要です。「会社の定める場所」「会社が指定する場所」といった包括的表現にしている場合は変更不要のケースもありますが、具体的な住所が記載されているケースでは必ず修正します。
② 通勤手当
移転によって従業員の通勤経路・通勤距離が変わるため、通勤手当の見直しが必要です。就業規則に「実費支給・上限○○円」と定めている場合、移転後の実態と乖離が生じます。特に移転先が都心から離れる場合は通勤費が増加する従業員が多く、上限額の引き上げを検討するケースもあります。
逆に都心への移転で通勤費が全体的に下がる場合でも、個々の従業員の手当を一方的に削減すると不利益変更に該当する可能性があります。変更前に社会保険労務士等の専門家に確認することをお勧めします。
③ 始業・終業時刻(変更が生じる場合)
移転先のエリアによっては、多数の従業員の通勤時間が大幅に変わるケースがあります。これを機にフレックスタイム制の導入や始業時刻の変更を行う企業もあります。時刻変更は就業規則の絶対的必要記載事項であるため、変更する場合は必ず就業規則に反映させます。
就業規則変更の手順と届出フロー
| ステップ | 内容 | 目安時期 |
|---|---|---|
| ① 変更箇所の洗い出し | 現行の就業規則と移転後の状況を照合し、変更が必要な項目を特定する | 移転決定後すぐ |
| ② 変更案の作成 | 新住所・通勤手当ルール・時刻等の変更案を作成する | 移転の2か月前 |
| ③ 労働者代表への意見聴取 | 過半数労働組合または過半数代表者から意見書を取得する | 移転の1か月前 |
| ④ 従業員への周知 | 掲示・書面交付・イントラネット等で全員に周知する | 移転の2週間前 |
| ⑤ 労働基準監督署へ届出 | 変更届・意見書・新旧就業規則を持参または電子申請で提出する | 移転日以降速やかに |
オフィス移転に伴う就業規則変更や届出手続きは、物件選定と同時に進めることでリスクを大きく減らせます。移転先の条件(エリア・賃料・設備)を確認しながら手続きを並行して進めたい方はこちらから。
公開中のオフィス物件を確認する(無料)なお、常時10名未満の事業場は届出義務がありませんが、変更内容の周知は必要です。また事業場単位での届出が原則となるため、複数拠点を持つ企業は拠点ごとに管轄の労働基準監督署へ届出が必要な点に注意してください。
移転と同時に就業規則を整備するケースは多いですが、手続きをギリギリまで放置して移転日直前に慌てるケースも少なくありません。意見聴取から届出まで最低でも1か月は見ておくべきです。変更内容によっては社会保険労務士への相談を強くお勧めします。
同意の取り方と不利益変更の判断
労働者代表の意見聴取
就業規則の変更には、事業場の過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴取し、意見書を添付することが法律上の要件です(労働基準法第90条)。「意見聴取」であり「同意」ではないため、代表者が反対意見を記載した場合でも届出は可能です。ただし、不利益変更の場合は実質的な合理性と同意が重要になります。
不利益変更に該当するケースと対応
以下の場合は「不利益変更」として、個々の従業員の同意が必要になる可能性があります。
- 通勤手当の上限額を下げる
- 勤務時間を延長する
- 移転先への出社を強制することで実質的な労働条件が悪化する
不利益変更を行う場合、変更の合理性(経営上の必要性・変更内容の相当性)と、代替措置(手当の新設等)の有無が判断基準となります。判断が難しい場合は必ず社会保険労務士や弁護士にご確認ください。なお、移転に伴う原状回復工事の進め方や移転費用のシミュレーションについても合わせてご確認ください。
トラブルになりやすい実務ケース
オフィス移転に伴う就業規則変更では、以下のようなケースで労使間のトラブルが発生しやすいです。当社実務経験でも相談を受けることがある事例として参考にしてください。
通勤費の減額で揉めるケース
移転先が都心寄りになり、多くの従業員の実費通勤費が下がった場合に、会社が就業規則の通勤手当上限を一方的に引き下げるケースです。従業員が既得の手当として認識している場合は不利益変更に該当しうるため、削減前に個別同意を取得するか、激変緩和措置(経過措置期間の設定等)を設けることが重要です。
転勤扱いになるケースへの注意
同一都市内の移転であっても、移転距離が大きく通勤時間が著しく増加する場合、実質的な「転勤」と評価されることがあります。就業規則に転居を伴う転勤の規定がある場合と、単純な事業所移転の場合では従業員への説明責任が異なります。移転距離が大きい場合は社会保険労務士への相談を優先してください。
在宅勤務から出社強制になるケース
コロナ禍以降にテレワーク勤務を認めていた企業が、移転を機に全員出社に戻す際にトラブルになるケースが増えています。テレワーク規程や個別合意書で在宅勤務を認めていた場合、一方的な出社義務化は労働条件の不利益変更にあたる可能性があります。移転と同時にテレワーク運用を変更する場合は、必ず個別の合意取得と就業規則・テレワーク規程の同時改定を行ってください。
従業員への周知義務
就業規則は、常時事業場の見やすい場所への掲示、書面交付、または電子データによる閲覧が可能な状態にすることで周知義務を果たします(労働基準法第106条)。
実務的には以下の方法が多く使われています。物件・条件により対応可能な方法は異なりますが、複数の手段を組み合わせることを当社ではお勧めしています。
| 周知方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 掲示板への掲示 | 法定要件を最も確実に満たす | 移転後の新オフィスでも掲示継続が必要 |
| 書面交付 | 全従業員への確実な伝達 | 受領確認書の取得を推奨 |
| イントラネット・社内システム | リモート従業員にも対応可能 | 閲覧できる環境であることが条件 |
| メール配信 | 即時性・記録性が高い | 単独では周知手段として不十分なケースも |
移転前の就業規則チェックリスト
- □ 就業場所の記載:旧住所が明記されている場合は新住所に変更
- □ 通勤手当の規定:上限額・支給条件が現状と合っているか確認
- □ 始業・終業時刻:変更する場合は規則に反映
- □ 意見聴取:労働者代表から意見書を取得済みか
- □ 労基署への届出:変更届・意見書・新旧規則を準備済みか
- □ 従業員への周知:掲示・書面交付等の手段を確保済みか
- □ 不利益変更の有無:通勤手当削減等がある場合は専門家に確認
- □ 雇用契約書:就業場所を個別に記載している場合は合意書等で対応
よくある質問
常時10名未満の会社でも就業規則の変更届は必要ですか?
就業規則の変更は移転日前に完了させる必要がありますか?
テレワーク中の従業員がいる場合、就業場所はどう記載すればよいですか?
移転先が同じ市区町村内の場合でも変更が必要ですか?
社員から移転に反対された場合、どう対応すればよいですか?
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| 情報源 | 資料・根拠 |
|---|---|
| e-Gov法令検索 | 労働基準法(第89条・第90条・第106条)就業規則の作成・変更・届出・周知義務の法的根拠 |
| 厚生労働省 | モデル就業規則(令和5年版)就業場所・通勤手当の記載例として参照 |
| オフィサイト仲介実績 | 移転時の就業規則変更対応に関する実務経験(社内調査・目安) |





