公開日: 2026年04月04日
最終更新日: 2026年04月04日
賃貸オフィスの「一棟貸し」と「フロア貸し」の違い|メリット・デメリットと向いている企業
- 一棟貸しとフロア貸しの定義・仕組みの違い
- 一棟貸しのメリット(独立性・ブランド・BCP)と注意点
- フロア貸しの費用効率・物件の豊富さのメリット
- 一棟貸しが向いている企業・フロア貸しが向いている企業の判断基準
- 一棟貸しの賃料相場と交渉のポイント
「一棟貸し」と「フロア貸し」——この2つの賃貸形態の違いを正確に理解せずにオフィスを契約すると、後から「他のテナントとのトラブル」「セキュリティ強化の不安」「ブランドイメージの問題」といった課題が表面化することがあります。本記事で両者の違いと選び方を解説します。
1. 一棟貸し(一棟借り)とフロア貸し(区画貸し)の基本的な違い
| 項目 | 一棟貸し | フロア貸し(区画貸し) |
|---|---|---|
| 定義 | ビル全体を1社で借りる | ビルの1フロアまたは一部を借りる |
| 他テナント | なし(完全な専有) | あり(同ビルに複数テナント) |
| エントランス | 自社専用デザインが可能 | 共用エントランス |
| セキュリティ | 自社で完全管理できる | 共用部分はビル管理者が管理 |
| サイン・看板 | 外観に自社サインを設置可能 | 共用サインパネルのみ |
| 賃料水準 | フロア貸しより割高の場合が多い | 相場通りの賃料 |
| 主な対象企業 | 100〜1,000名規模・上場企業等(目安。業種・セキュリティ要件により異なります) | 1〜500名規模の幅広い企業 |
一棟貸しへの移転を機に、採用数が増えたというお客様がいます。エントランスを自社ブランドでデザインしたことで、内見に来た候補者の反応が変わったそうです。一棟貸しは「ビルの顔が自社の顔になる」という採用ブランディング効果が期待できます。
2. 一棟貸しのメリット
①完全な機密性とセキュリティ
他テナントが存在しないため、ビル全体を自社のセキュリティポリシーで管理できます。入退館ログ・監視カメラ・来訪者管理をすべて自社基準で運用でき、情報漏洩リスクを最小化できます。
②企業ブランドの体現
外観・エントランス・共用部を自社ブランドでデザインできます。来訪者・採用候補者に対して「この会社は本気だ」という印象を与えられ、採用ブランディングにも有効です。
③完全なBCP設計
ビル全体の非常用電源・空調・通信インフラを自社仕様に最適化できるため、事業継続計画(BCP)の設計自由度が最大化されます。
3. 一棟貸しのデメリット・注意点
一棟貸しでコスト効率が落ちる最大の理由は、ビルの全床面積に対して賃料が発生するためです。稼働率が低い(空きスペースが多い)状態でも固定費は変わらず、特にスタートアップや急成長中の企業では「払っているが使っていない面積」が発生しやすくなります。また、共用部の維持管理費・清掃費・受付費用がテナント負担になるケースも多く、表面賃料だけで比較すると実際のコストを見誤ります(当社実務経験より)。
ビル全体の賃料を負担するため、自社使用面積が少ない場合はコスト効率が悪い
ビル設備(エレベーター・受付・清掃)の維持管理費がテナント負担になるケースがある
物件数がフロア貸しと比べて圧倒的に少ない
将来の縮小・増員に対応しづらい(フロア単位での調整が難しい)
4. フロア貸し(区画貸し)のメリット
フロア貸し(区画貸し)が増床・縮小に強い理由は、同一ビル内に空き区画があれば追加契約でスペースを広げられる仕組みにあります。成長フェーズに応じて半フロア→1フロア→複数フロアと段階的に拡張できるため、人員計画の変動が大きい企業に適しています。また、初期は小規模区画からスタートして資金を温存し、収益が安定してから面積を拡大するという戦略も取りやすいです(当社実務経験より)。
物件数が豊富で希望条件に合った物件を見つけやすい
使用面積に応じた賃料負担でコスト効率が高い
将来の増床・縮小を同ビル内でフレキシブルに対応できる場合がある
共用部(エントランス・清掃・エレベーター)の維持管理はビル側負担
「一棟貸しかフロア貸しか迷っています」というご相談には、必ず3年後の人数計画を確認します。急成長中の企業が一棟貸しにしてしまうと、増員した際に隣のフロアを増床できないケースがあります。成長スピードが読めない段階ではフロア貸しで柔軟性を確保し、安定フェーズに入ってから一棟貸しに移行する順番が現実的です。
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最適な賃貸オフィスを無料相談する5. どちらを選ぶべきか:企業規模・業種別ガイド
| 企業の状況 | 推奨タイプ | 主な理由 |
|---|---|---|
| 機密情報の取り扱いが多い(法律・金融・医療) | 一棟貸し | セキュリティの完全管理が必要 |
| 採用ブランディングを重視する上場企業 | 一棟貸し | 外観・エントランスの自社デザイン |
| 100名未満のスタートアップ・成長企業 | フロア貸し | コスト効率・物件選択肢の豊富さ |
| 増員ペースが読めない急成長企業 | フロア貸し | 増床のフレキシビリティ確保 |
| 完全独立したBCP拠点が必要 | 一棟貸し | 自社基準のインフラ設計 |
| コストを最優先にしたい中小企業 | フロア貸し | 同エリアで賃料を最適化できる |
6. 一棟貸しの賃料相場と交渉ポイント
一棟貸しはフロア貸しと比較して、ビル全体の空室リスクをオーナーが避けられるため、交渉次第で有利な条件を引き出せることがあります。
- 一棟貸し交渉では「長期契約(5年以上)」と「大規模原状回復費用の免除」をセットで交渉することで、実質的なコスト削減が可能です。
- また、小規模なビルの一棟貸しでは、賃料がフロア貸しとほぼ同等になるケースもあります。
7. 初期費用・管理負担・原状回復の違い
一棟貸しとフロア貸し(区画貸し・一棟借り)では、賃料だけでなく初期費用・日常管理の負担・退去時の原状回復範囲が大きく異なります。ビル一括賃貸(一棟賃貸)を検討する際は、以下の費用項目を必ずトータルで比較してください。
| 費用・負担項目 | 一棟貸し(一棟借り) | フロア貸し(区画貸し) |
|---|---|---|
| 原状回復工事 | ビル全体が対象。原状回復費用は規模が大きく高額になりやすい(当社実務経験より) | 借りた区画のみが対象。範囲が限定されるため費用を抑えやすい |
| 共用部の清掃・警備 | テナント負担になるケースが多い。月額数十万円規模になることも | ビルオーナー・管理会社負担。共益費に含まれるのが一般的 |
| 設備保守・修繕 | エレベーター・空調・受付設備等の保守費用がテナント負担になる場合あり | ビル側負担が基本。テナント専用設備のみ負担 |
| 看板・サイン工事 | エントランス・外壁など自由度が高い一方、設置・撤去費用はテナント負担 | 共用エントランスのサインのみ。設置範囲・デザインに制約あり |
| 初期費用総額の目安 | 賃料の12〜18ヶ月分程度(保証金・内装・設備保守込み) | 賃料の6〜12ヶ月分程度(物件グレードにより差あり) |
▲ 一般的な目安。物件・契約条件により大きく異なります(当社実務経験より)。
人数規模別の判断目安
| 従業員規模 | 推奨タイプ | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 50名未満・成長フェーズ | フロア貸し優位 | 人員変動に柔軟に対応できる。初期費用を抑えて資金を温存 |
| 50〜100名・安定フェーズ | どちらも検討可 | 来客頻度・機密情報量・ブランド重視度で判断 |
| 100名超・セキュリティ重視 | 一棟貸し候補 | 専有によるセキュリティ強化と採用ブランディングの効果が大きい |
| 3年以内に増減が大きい | フロア貸し優位 | 同ビル内での面積調整・移転タイミングの柔軟性を確保 |
▲ あくまで目安。業種・セキュリティ要件・財務状況により判断が変わります(当社実務経験より)。
8. 状況別ネクストアクション
| 🎯 あなたの状況別ネクストアクション | |
| 一棟貸しを検討している | まず「機密性の必要性」「採用ブランディングの重要度」「コスト許容範囲」を整理し、オフィサイトに相談 |
| フロア貸しで探している | エリア・坪数・24時間対応・空調タイプを条件として仲介会社に依頼 |
| 一棟貸しか区画か迷っている | 現在の従業員数と3年後の計画を基に「1人あたりコスト」で試算して比較 |
| セキュリティを最重視している | 一棟貸し物件 + ICカード管理 + 24時間警備の条件で物件を絞り込む |
9. まとめ
一棟貸し(一棟借り・ビル一括賃貸)とフロア貸し(区画貸し)の選択は、企業のセキュリティニーズ・ブランド戦略・財務状況・成長計画によって最適解が変わります。機密性・ブランド・BCP重視なら一棟貸し、コスト効率・柔軟性重視ならフロア貸しが基本的な判断軸です。
- ① 現在の人数:50名未満はフロア貸し、100名超は一棟貸しも候補
- ② 3年後の人数計画:増減が大きければフロア貸しで柔軟性を確保
- ③ 来客・機密情報の頻度:高いほど一棟貸しのセキュリティ・格式が有効
- ④ 初期費用の許容範囲:一棟貸しは原状回復・管理費込みでトータル試算を
迷う場合は現在の従業員数と3〜5年後の成長計画、来客頻度、情報管理レベルの4点を整理した上でオフィサイトへご相談ください。
よくある質問(FAQ)
一棟貸しと区画貸しで賃料はどのくらい違いますか?
同一エリア・同一面積で比較すると、一棟貸しは区画貸しより10〜30%程度割高になるケースが多いです(一般的な傾向として。物件・条件により異なります。当社実務経験より)。ただしビル全体を占有することで共用部の維持管理費が別途発生するケースもあります。長期契約(5年以上)を提案することで、一棟貸しの賃料を区画貸し並みに交渉できるケースもあります。
一棟貸しでも小規模ビルならコストを抑えられますか?
はい、5〜6階建て・基準階50〜100坪程度の小規模ビルの一棟貸しであれば、大型ビルの区画貸しと近似した賃料帯になるケースがあります。エントランスの専用利用・セキュリティの完全管理・看板設置のメリットを低コストで享受できるため、20〜50名規模の企業に人気の選択肢です。
フロア貸しで他テナントとのトラブルは起きますか?
エントランス・エレベーター・トイレ等の共用部での騒音・マナーの違いによるトラブルは稀に発生します。入居前に「同ビルの他テナントの業種・利用時間帯」を仲介会社経由で確認してください。競合他社が同ビルにいるケースも確認しておくと安心です。
一棟貸しビルの看板・サインはどこまで設置できますか?
オーナーとの交渉次第ですが、一棟貸しの場合はビル外壁・エントランス・屋上(場合によって)に自社サインを設置できるケースが多いです。デザイン・サイズ・設置工事の費用負担区分を契約書に明記してください。看板設置の可否は物件選定段階で必ず確認してください。
将来縮小する可能性がある場合、一棟貸しはリスクですか?
はい、リスクがあります。一棟貸しでビル全体の賃料を負担している状態で人員削減・事業縮小が必要になった場合、余剰スペースを解消する手段が限られます。5年以上の見通しが立っている場合のみ一棟貸しを検討し、不確定要素が多い場合はフロア貸しで増床のフレキシビリティを確保することをお勧めします。
「一棟貸し」と「区画貸し(フロア貸し)」は同じ意味ですか?
ほぼ同義で使われますが、厳密には異なります。「一棟貸し」はビル全体を1社で専有する形態、「区画貸し(フロア貸し)」は1フロアまたは一部区画を賃借する形態です。「フロア貸し」は1フロアを丸ごと借りるイメージですが、「区画貸し」はフロアの一部を指すこともあります。物件案内では混在して使われることが多いため、契約前に「他テナントとの共用があるか」を必ず確認してください。
参考・出典元
本記事の法律・制度・費用に関する記載は、下記の官公庁・行政機関等の公式情報を参考・根拠としています。
| 情報源 | 資料・ページ名 / 参照内容 |
|---|---|
| e-Gov 法令検索(総務省) | 宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明)一棟貸し・フロア貸し物件の重要事項説明義務の根拠 |
| e-Gov 法令検索(総務省) | 建築基準法 第2条(建築物の定義)建物の種類・一棟の法的定義の根拠 |
| 国土交通省 | 不動産業に関するデータ集(国土交通省)東京都心の一棟貸しオフィス市場の動向参考 |
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