公開日: 2026年04月04日

最終更新日: 2026年04月04日

賃貸オフィスの耐震基準とは?旧耐震・新耐震・免震の違いと安全性の確認方法

オフィスの耐震基準と安全性の確認方法|旧耐震・新耐震・免震の違いをわかりやすく解説
Is値0.6以上耐震補強済みの安全水準の目安(国土交通省基準)
1981年が分岐点旧耐震/新耐震の判定基準年(建築基準法改正)
BCP耐震確認の最大の目的
📋 この記事を読むとわかること
  • 旧耐震・新耐震・免震・制振の違いと具体的な基準
  • 物件の耐震性能を確認する3つの方法
  • 耐震補強済みビルの見分け方と信頼できる確認先
  • BCP(事業継続計画)の観点から見た耐震評価のポイント
  • 地震リスクの高いエリアでのオフィス選び注意点

オフィス移転の際、多くの企業が見落としがちなのが「耐震性能」の確認です。賃料・立地・設備を重視するあまり、実際にビルが地震に耐えられるかを確認しないまま契約してしまうケースが後を絶ちません。本記事では、旧耐震・新耐震・免震の違いと、物件内見時に使える実践的な確認方法を解説します。

矢冨 裕敏(宅地建物取引士)のコメント

「築年数が古くても大丈夫ですか?」というご質問はとても多いです。答えは「耐震診断結果次第」です。1970〜80年代竣工でも大規模リノベと耐震補強が済んでいるビルは安全水準が高いですが、補強なしの旧耐震ビルは社員の安全とBCPの両面からリスクがあります。必ず耐震診断結果の書面開示を求めてください。

耐震・制振・免震の構造比較 旧耐震基準 1981年以前 震度5強で 倒壊しない ⚠ 要耐震診断 新耐震基準 1981年以降 震度6〜7でも 倒壊しない ✓ 標準仕様 制振構造 新耐震+α 振動エネルギーを ダンパーで吸収 ✓ 揺れ軽減 免震構造 最高水準 地盤と建物を アイソレーターで絶縁 ✓ 揺れ大幅軽減 ▲ 一般的な構造区分の概要。個別物件の耐震性能は必ず管理会社・設計者に書面で確認してください。
▲ 旧耐震・新耐震・制振・免震の構造比較

1. 旧耐震基準と新耐震基準の決定的な違い

日本の耐震基準は1981年(昭和56年)6月1日を境に大きく変わりました。この日以前に建築確認を受けたビルが「旧耐震基準」、以降が「新耐震基準」です。

項目 旧耐震基準(〜1981年5月) 新耐震基準(1981年6月〜)
想定する地震規模 震度5強程度で損傷しない 震度6強〜7でも倒壊しない
主な対象 1981年以前竣工のビル 1981年6月1日以降の建築確認
阪神淡路大震災 多数の倒壊・全壊被害 新耐震基準適合ビルは大規模地震での被害が相対的に少ない傾向がある(国土交通省・建築物の耐震化推進に関する統計より)
東日本大震災 倒壊例あり 概ね安全(液状化・津波は別途)
法的義務 既存は適合義務なし 新築・増改築時に適合必須
⚠️ 重要
  • 既存の旧耐震ビルに対して、耐震改修を強制する法律(耐震改修促進法)はありますが、すべてのビルに即時改修義務があるわけではありません。
  • 「新耐震」「耐震補強済み」と表記されていても、補強の範囲・工法によって耐震性能は大きく異なります。
耐震構造の3種類:仕組みと性能の違い 耐震構造 建物自体を強化 揺れは建物に伝わる 最も一般的 コスト:標準 制振構造 振動を吸収する装置 揺れを低減する 中高層ビルに多い コスト:やや高め 免震構造 地盤と建物を切り離す 揺れが建物に伝わりにくい BCP対策で最高性能 コスト:高め BCP重視の企業には免震・制振ビルの確認を推奨 — 旧耐震基準ビルは診断・補強履歴の確認が必須
▲ 耐震・制振・免震構造の違い

2. 免震・制振・耐震の違い

現在のハイグレードビルでは「免震構造」「制振構造」「耐震構造」のいずれかが採用されています。それぞれ地震への対応方法が根本的に異なります。

構造 仕組み 効果 主な採用ビル
耐震構造 壁・柱を強化して揺れに耐える 揺れ自体を受け止める 一般的なビル全般
制振構造 ダンパーで揺れのエネルギーを吸収 揺れを低減・短時間で収束 中高層の新築ビル
免震構造 基礎と建物の間にゴム層を挿入 建物への揺れを大幅に低減 Sクラス・Aクラスの新築(Sクラス:延床10,000坪超の超高層・大規模ビル、Aクラス:延床3,000坪超の高仕様ビル)
💡 ポイント
  • 免震構造のビルは内装・什器への損傷が少なく、地震後も速やかに業務再開できる可能性が高いため、BCP観点では最も優れています。
  • Sクラス・Aクラスビル(延床規模・仕様による格付け)への移転を検討する際は免震・制振の有無を必ず確認してください。

3. 物件の耐震性能を確認する3つの方法

📋 耐震性能の実務確認フロー
  1. 仲介会社へ依頼:「耐震診断報告書・建築確認済証の開示をお願いしたい」と書面で依頼
  2. 管理会社・オーナーへ確認:仲介会社経由で補強工事の実施有無・Is値(0.6以上が目安)を確認。未診断・Is値未開示の場合は候補から外すか慎重に判断
  3. 書面で取得:口頭確認にとどまらず、耐震診断報告書・補強工事報告書を必ず書面で入手
  4. 内見時に再確認:建物の構造表示板・エントランスの認定プレートで新耐震・免震の表示を目視確認

方法①:建築確認済証・検査済証の確認

最も確実な方法は建築確認済証の「確認済証交付年月日」を確認することです。1981年6月1日以降であれば新耐震基準適合です。仲介会社または管理会社に依頼してください。

方法②:耐震診断報告書の確認

旧耐震ビルで耐震補強が行われている場合、「耐震診断報告書」と「耐震補強工事報告書」が存在します。Is値(構造耐震指標:建物の耐震性能を数値化した指標で、1.0に近いほど耐震性が高く、0.6以上が「大規模地震でも倒壊しない」水準の目安)が0.6以上であれば一定の安全水準が確保されているとされます。

方法③:不動産・建物登記情報の確認

登記情報には建築年が記載されており、1981年以前の竣工か否かを確認できます。法務局またはオンライン(登記情報提供サービス)で取得可能です。

💡 実務のポイント
  • 内見時に管理会社・オーナーに「耐震診断結果を書面で開示してください」と依頼してください。
  • 開示を拒否するビルは耐震性能の確認ができないため、慎重に判断することが重要です。
  • 書面開示に応じてくれるビルを優先的に候補に加えることをお勧めします。
矢冨 裕敏(宅地建物取引士)のコメント

免震ビルに移転したお客様から「地震の後もほとんど什器が倒れなかった」という声をいただいています。揺れが少ないと業務再開が速く、サーバーやPCへの損傷リスクも下がります。BCP費用を別途かける前に、まず免震・制振ビルへの移転を検討することをお勧めしています。

🏢 耐震診断結果を確認しながら物件を探したい方へ

耐震性能について相談する

4. BCP観点からの耐震評価ポイント

耐震基準の確認はBCP(事業継続計画)の第一歩です。地震後に業務を継続できるかどうかは、ビルの構造だけでなく以下の要素が複合的に影響します。

  • 非常用発電機の有無(停電時の業務継続)

  • 免震・制振構造による什器・サーバーの損傷リスク

  • 建物の立地(液状化リスクエリアの確認)

  • エレベーター閉じ込め対策の有無

  • 備蓄倉庫・ビルグレード(Sクラス・Aクラス等)備品の完備状況

5. 地震リスクの高いエリアでの物件選び

東京都の「地震に関する地域危険度測定調査」では、エリア別の危険度ランキングが公表されています。下町エリア(墨田区・江東区・台東区など)は液状化・火災リスクが相対的に高いため、耐震性能の確認をより重視する必要があります。

💡 ポイント
  • 東京都防災ホームページの「地震に関する地域危険度マップ」でエリアの危険度を事前に確認してください。
  • 危険度ランク4〜5のエリアでは、新耐震基準適合・耐震補強済み・免震構造のビルを優先的に検討することをお勧めします。

6. 状況別ネクストアクション

🎯 あなたの状況別ネクストアクション
今のビルが旧耐震で不安 管理会社に耐震診断報告書の開示を依頼。Is値0.6未満・未診断の場合は入居を慎重に検討
新規移転先の耐震を確認したい 仲介会社に「建築確認年・耐震診断結果・免震制振の有無」を書面で確認依頼
BCPとしてのオフィス対策を強化したい 免震・制振ビルへの移転 + 在宅・サテライト環境の整備をセットで検討
耐震性能で物件を絞り込みたい オフィサイトに相談。新耐震・免震・非常用発電完備の物件を優先して提案

7. 仲介会社に聞くべき耐震確認の質問5つ

賃貸オフィスの耐震性能は、内見前に仲介会社経由で確認するのが最も効率的です。以下の質問を書面で依頼してください。

確認項目質問の仕方・確認ポイント
① 建築確認日の確認「建築確認済証の交付年月日を教えてください。1981年6月1日以降ですか?」
② 耐震診断報告書の開示「耐震診断報告書はありますか?Is値を含む書面で開示していただけますか?」
③ 補強工事の実施履歴「耐震補強工事は実施されていますか?工事報告書の提示は可能ですか?」
④ 免震・制振構造の有無「免震または制振構造ですか?アイソレーター・ダンパーの設置確認書はありますか?」
⑤ BCP対応設備の確認「非常用発電機・備蓄倉庫・防災設備の整備状況を教えてください。地震後の設備停止リスクはどの程度ですか?」
💡 実務のポイント

上記5点を口頭ではなく書面で回答を求めることが重要です。「口頭では聞いたが書面がない」状態では、後で確認できません。回答を書面でもらえないビルは、耐震性能の透明性に疑問が残ると判断してください。

8. まとめ

オフィスの耐震性能は、社員の安全・BCP・企業継続に直結する重要な選定基準です。「新耐震基準適合か」「免震・制振構造か」「耐震補強工事の実施有無」の3点を内見前に仲介会社経由で必ず確認し、旧耐震ビルは耐震診断結果・補強履歴を必ず書面で確認し、未確認の物件への入居は慎重に判断してください。

よくある質問(FAQ)

旧耐震ビルに入居しても大丈夫ですか?

旧耐震ビルは1981年以前の基準で建設されており、大規模地震での倒壊リスクが相対的に高いです。耐震補強工事(Is値0.6以上)が実施されている場合は一定の安全性が確保されますが、新耐震ビルと比較して安全性は低くなります。BCP・社員の安全の観点から、耐震診断報告書(Is値0.6以上)の確認を前提に判断することをお勧めします。新耐震基準適合ビルへの移転が最も安全な選択肢です。

耐震診断の結果はどこで確認できますか?

物件の耐震診断結果は、仲介会社経由でビルオーナーまたは管理会社に開示を依頼することで確認できます。また法務局で登記情報(建築年確認)を取得し、1981年6月以降の建築確認であれば新耐震基準適合です。開示を拒否するビルへの入居は慎重に判断してください。

免震構造と制振構造はどちらが優れていますか?

免震構造は建物への揺れ入力を最も大幅に低減できるため、BCP・精密機器の保護・内装損傷防止の観点で最も優れています。制振構造はコストと効果のバランスが良く、中高層ビルに多く採用されています。どちらも耐震構造より地震への耐性は高く、SクラスやAクラスのビルに多く採用されています。

液状化リスクエリアとはどこですか?

東京都内では江東区・墨田区・江戸川区・台東区・荒川区などの旧下町エリア・埋立地が液状化リスクが相対的に高いエリアです。東京都防災ホームページの「液状化予測図」で確認できます。液状化リスクの高いエリアでは、新耐震基準適合+免震・制振構造のビルを優先してください。

耐震補強済みの旧耐震ビルは入居候補になりますか?

耐震診断報告書でIs値0.6以上、かつ耐震補強工事が完了していれば、候補として検討できます。重要なのは「旧耐震かどうか」ではなく「耐震診断・補強の実施有無と結果」です。補強済みで書面確認ができる物件であれば、立地・賃料が有利なケースもあります。ただし新耐震基準適合ビルと比較した場合の安全性の差は残るため、BCP要件と照らし合わせて判断してください(当社実務経験より)。

BCP対策としてオフィス選びで最も重要な点は何ですか?

①新耐震基準適合(できれば免震・制振)、②非常用発電機の有無、③在宅・サテライト勤務が可能なITインフラ整備、の3点が最重要です。単一拠点への依存度を下げ、分散型ワーク環境との組み合わせで事業継続性を確保することが現代のBCPの基本です。

参考・出典元

本記事の法律・制度・費用に関する記載は、下記の官公庁・行政機関等の公式情報を参考・根拠としています。

情報源資料・ページ名 / 参照内容
国土交通省建築物の耐震改修の促進に関する法律等(法律・政令・省令一覧)旧耐震・新耐震基準の区分と耐震改修義務に関する法的根拠
e-Gov 法令検索(総務省)建築基準法 第20条(構造耐力)建物の構造耐力・耐震基準に関する法的根拠
国土交通省住宅・建築物の耐震化について(国土交通省)建築物の耐震化推進・耐震診断支援制度の概要

🏢 耐震性能・BCP対応のオフィス選びをサポートします

「新耐震基準適合か」「免震・制振構造か」「耐震診断報告書の開示は可能か」——これらを条件に絞った物件探しと交渉を代行します。移転の早い段階からご相談いただくほど、選択肢が広がります。

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