公開日: 2026年04月14日

最終更新日: 2026年04月14日

ABW・ウェルビーイングオフィスとは|フリーアドレスとの違いと導入・設計のポイント

ABW・ウェルビーイングオフィスの設計イメージ

※本記事は賃貸オフィス実務16年・累計1,000件以上の契約実績を持つ専門家が監修しています。

「ABWやウェルビーイングオフィスという言葉を聞くが、フリーアドレスと何が違うのか分からない」「導入するとどんな効果があるのか」——そうお感じの経営者・総務担当者・オフィス設計を担当する方向けに、概念の整理から設計のポイントまで解説します。

ABWActivity Based Working(活動ベースの働き方)
生産性・定着率ウェルビーイング向上で改善が期待される指標
フリーアドレスとの違い「場所の選択」より「活動の選択」が軸
📋 この記事でわかること
  • ABW・ウェルビーイングオフィスの定義と違い
  • フリーアドレスとABWの本質的な違い
  • 導入企業に期待される効果と注意点
  • ABW・ウェルビーイングオフィスの設計のポイント
  • 賃貸オフィスで実現するための物件選びのコツ

ABW・ウェルビーイングとは何か

ABW(Activity Based Working)とは

ABWとは「Activity Based Working(活動ベースの働き方)」の略で、仕事の内容・目的(活動)に応じて、働く場所・席・環境を社員自身が選択する働き方です。1990年代にオランダで提唱され、欧米・オーストラリアを中心に普及し、日本でも2010年代後半から注目を集めています。

ABWの核心は「活動に最適な場所で働く」ことです。集中作業はなるべく静かな個室ブースで、チームMTGはコラボスペースで、リラックスしながら考えたいときはラウンジで——というように、活動の種類に応じて場を使い分けることができる環境を整備します。

ウェルビーイングオフィスとは

ウェルビーイング(Well-being)とは「身体的・精神的・社会的に良好な状態」を意味します。ウェルビーイングオフィスとは、社員の健康・幸福感・働きやすさを重視した設計のオフィスのことです。

具体的には、自然光・空気質・温度管理・緑化・エルゴノミクス(人間工学)に基づく家具・休憩スペースの充実などを通じて、社員の身体的・精神的健康を支える環境を作ることを指します。


ABWウェルビーイングオフィス
主な目的活動に応じた場の選択による生産性向上社員の健康・幸福感・働きやすさの向上
アプローチ働く場所・席の選択肢を増やす環境の質(光・空気・緑・家具等)を高める
関係性ABWを実現するためにウェルビーイング設計を取り入れることが多いウェルビーイング設計はABWの基盤になりやすい
💡
ABWとウェルビーイングは別概念ですが、実務上はセットで導入されるケースが多いです。「活動に応じた場を選べる」ためには、どの場所も一定の快適さ・機能性を持っている必要があるからです。

フリーアドレスとABWの違い

ABWはよく「フリーアドレスの進化形」と説明されますが、本質的には異なる概念です。

固定席
全員に固定の席がある
  • 帰属意識が高い
  • 個人の道具・資料を置ける
  • スペース効率は低い
フリーアドレス
席を固定せず自由に選ぶ
  • スペース効率が上がる
  • 部門間交流が生まれやすい
  • 「席がない」不満が出やすい
ABW
活動に応じた場を選ぶ
  • 集中・協業・休憩など活動別に最適化
  • 自律的な働き方を促進
  • 設計・運用コストが高め
比較項目フリーアドレスABW
席の考え方「どの席でも同じ仕事ができる」前提「活動によって最適な場が違う」前提
空間の種類基本的にデスクのみ(均一)集中ブース・コラボ・ラウンジ等を多様に設置
目的主にスペース効率・コスト削減生産性・創造性・ウェルビーイングの向上
必要な面積固定席より少なく設計できる多様なゾーンが必要なため広めになりやすい
導入コスト比較的低い設計・家具・IT整備で高くなりやすい
宅地建物取引士のコメント

「フリーアドレスにしたが社員の不満が続いている」という相談をよく受けます。フリーアドレスは「席を固定しない」だけで、活動に応じた場の多様性がないと「どこで何をしてよいか分からない」状態になりがちです。ABWはその課題に対する一つの答えですが、導入には広い面積と設計への投資が必要なため、物件選びの段階から意識することが重要です。

導入で期待できる効果と注意点

期待できる効果

効果内容
生産性の向上集中が必要な作業・協業・休憩など活動に最適な環境で働くことで、作業効率が上がりやすいとされる
創造性・イノベーションの促進偶発的な対話・異部門交流が生まれやすく、アイデアが生まれやすい環境になりやすい
社員の健康・満足度向上自然光・緑・快適な温湿度・エルゴノミクス家具が身体的・精神的健康を支える
採用・定着率への好影響オフィス環境の質が採用候補者や既存社員への魅力につながりやすい
自律的な働き方の促進「どこで働くか」を自分で決める文化が定着すると、自律性・主体性が育ちやすい

※上記効果はオフィサイト実務経験および国内外の研究・事例をもとに整理した参考情報です。効果の大きさは企業文化・業種・運用方法により異なります。

注意点・導入前に確認すべきこと

注意点内容
広めの面積が必要多様なゾーンを設けるため、フリーアドレスより広い面積が必要になりやすい
設計・家具コストが高いゾーン別の家具・防音ブース・IT設備への投資が必要
マネジメントスタイルの変革が必要「見ていないと不安」な管理スタイルとは相性が悪く、成果主義への移行が前提になりやすい
全業種・全職種に向くわけではない個人情報・機密書類を多く扱う業種や、固定設備が必要な職種とは相性が悪いケースがある

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設計のポイント:必要なスペースと設備

ABW・ウェルビーイングオフィスを実現するには、「活動の種類」を整理し、それぞれに対応したゾーンを設計することが出発点です。

ABWで必要な主なゾーン

ゾーン用途設計のポイント
集中ゾーン(個室・ブース)集中作業・オンラインMTG防音性・照明・換気を確保。1〜2名用の個室ブースが理想
コラボゾーンチームMTG・ブレスト・議論ホワイトボード・可動式家具・プロジェクター等を整備
オープンデスク一般的な業務・軽い作業フリーアドレス形式。席予約システムと組み合わせると効果的
ラウンジ・リラックスゾーン休憩・非公式な対話・リフレッシュソファ・観葉植物・自然光を取り入れた設計
電話ボックス型ブース短時間の集中・電話・1on11名用・防音性・換気を確保
静音ゾーン(図書館型)長時間の深い集中作業会話禁止ルール・静音設備・快適な照明

ウェルビーイング設計の主な要素

  • 自然光・採光:窓面積・向き・昼光色照明の活用
  • 空気質・換気:CO2濃度管理・空気清浄・換気量の確保
  • 温湿度管理:個別空調・湿度コントロール
  • 緑化・バイオフィリックデザイン:観葉植物・自然素材の積極的な活用
  • エルゴノミクス家具:昇降デスク・腰痛対策チェア・モニターアーム等
  • 騒音対策:吸音パネル・防音ブース・ゾーン分けによるノイズコントロール

ABW導入が向いている企業・向かない企業

ABW・ウェルビーイングオフィスは万能ではありません。導入前に自社が「向いているか」を判断することが、失敗を防ぐ最初のステップです。


向いている企業・状況向かない企業・状況
業種・職種IT・クリエイティブ・コンサル・広告・メディア系など、創造性・自律性を重視する職種が多い個人情報・機密書類を常時扱う業種(士業・金融・医療等)、固定設備が必要な製造・研究系
マネジメント成果主義・自律型マネジメントが浸透している、またはそこへ移行しようとしている「見ていないと不安」な管理スタイルが根強い、プロセス管理が中心
規模・面積30名以上・50坪以上が複数ゾーン設計の現実的な目安(オフィサイト実務参考値)少人数・小スペースでは多様なゾーンを設けにくく、フリーアドレスで十分なケースが多い
予算・フェーズ移転・オフィス刷新のタイミングで設計に投資できる体力があるコスト削減が最優先の時期・スタートアップ初期など固定費を最小化すべきフェーズ
働き方テレワーク・ハイブリッドワークが定着し、出社の目的が「協業・創造」にシフトしている全員毎日出社・固定席の方が業務効率が高い業種・チーム
先にフリーアドレスで十分な会社はどこか

コスト削減・スペース効率改善が主な目的なら、まずフリーアドレスの導入で十分なケースが多いです。ABWはフリーアドレスの「次のステップ」であり、フリーアドレスを試してから課題が出た段階でABWに移行する企業も少なくありません。移転のタイミングでどちらが自社に合うかを判断することをお勧めします。

賃貸オフィスで実現するための物件選び

ABW・ウェルビーイングオフィスは、物件選びの段階から意識することが重要です。入居後に大幅な変更が難しい条件を事前にチェックしてください。

確認項目ABW・ウェルビーイングに必要な条件
天井高・開放感天井高2.7m以上あるとゾーン分けがしやすく開放感も出やすい
窓面積・採光自然光が入る窓面積が広いほどウェルビーイング効果が高まりやすい
床荷重・間取りの自由度仕切り・ブース設置に制限がないか、フロアの形状がゾーン分けしやすいか
個別空調の有無ゾーンごとに温度調整できる個別空調があるとウェルビーイング設計に有利
IT配線・電源容量多様なゾーンに電源・LAN配線が届くか、増設できるか
内装工事の自由度B工事(テナント工事)の範囲・制限を確認する

ABW設計に必要な面積の計算についてはオフィス面積と移転タイミング、ハイブリッドワーク全体の設計についてはハイブリッドワーク対応オフィスの作り方もあわせてご参照ください。内装工事コストを抑えたい場合はセットアップオフィスの活用も選択肢の一つです。

よくある質問

ABWとフリーアドレスは何が違いますか?
フリーアドレスは「席を固定しない」ことが主な目的で、基本的にデスクのみの均一な環境です。ABWは「活動の種類に応じて最適な場を選ぶ」ことが目的で、集中ブース・コラボスペース・ラウンジ等の多様なゾーンを整備します。フリーアドレスは主にスペース効率・コスト削減が目的なのに対し、ABWは生産性・創造性・ウェルビーイングの向上を目的としている点が本質的な違いです。
ウェルビーイングオフィスにするとどんな効果がありますか?
社員の身体的・精神的健康の改善、生産性・創造性の向上、採用・定着率への好影響などが期待されます。ただし効果の大きさは企業文化・業種・運用方法により異なります。自然光・空気質・温湿度・緑化・エルゴノミクス家具などの環境改善から始めると、比較的取り組みやすいです。
ABWは中小企業・少人数でも導入できますか?
全面的なABW導入は難しい場合でも、「集中ブースを1〜2台設置する」「ラウンジスペースを小さく設ける」など、部分的な導入から始めることが可能です。少人数の場合は、フルABWより「ゾーン型フリーアドレス(エリアを用途で分ける)」が現実的なケースが多いです。
ABWの導入にはどのくらいの面積が必要ですか?
ABWは多様なゾーンを設けるため、一般的なフリーアドレスより1〜1.5割程度広めの面積が必要になるケースがあります(オフィサイト実務経験上の参考値。業種・ゾーン構成・人数規模により大きく異なります)。ただし業種・業務内容・ゾーンの種類・数によって大きく異なります。面積の計算についてはテレワーク併用企業の面積設計もご参照ください。
ウェルビーイングオフィスで最も効果的な設備は何ですか?
費用対効果が高いとされる要素として、自然光・採光(窓側の配置)、観葉植物・緑化、エルゴノミクスチェア・昇降デスクが挙げられることが多いです。高額な設備投資より、既存オフィスの家具配置・照明・植物の追加など低コストの改善から始めることをお勧めします。効果は個人差・業種差があります。
賃貸オフィスでABWを実現するうえで最も重要な物件条件は何ですか?
最重要は「内装工事の自由度(B工事の範囲)」と「フロアの形状・柱の位置」です。仕切り・ブース設置・ゾーン分けに制限があると、ABW設計が難しくなります。また天井高・窓面積・個別空調の有無も重要な条件です。物件選びの段階でこれらを確認することをお勧めします。
ABW・ウェルビーイング導入に向いている業種・企業はどんなところですか?
IT・クリエイティブ・コンサルティング・広告・メディア系など、創造性・自律的な働き方を重視する業種と相性が良いとされています。一方、個人情報・機密書類を常時扱う業種や、固定した設備・機器が必要な製造・医療系とは相性が悪いケースが多いです。業種より「マネジメントスタイルが成果主義に移行できるか」が導入成否に影響するケースが多いです。

天井高・採光・内装自由度・個別空調は入居後に変えにくい条件です。ABW導入を検討しているなら、物件選びの段階からご相談いただくと選択肢が広がります。

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📎 参考・出典元

情報源資料・根拠
経済産業省Well-being経営の推進(人的資本経営)ウェルビーイングと企業経営の関係の参考資料として参照
国土交通省不動産市場動向調査オフィス設備・市況の参考データとして参照
オフィサイト仲介実績ABW・ウェルビーイングオフィス導入に関する社内調査・実務経験(目安)

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