公開日: 2026年04月04日

最終更新日: 2026年04月04日

35条書面と37条書面の違いとは?賃貸オフィス契約で知るべきポイントを解説

契約前35条書面(重要事項説明書)の交付タイミング
契約後37条書面(契約書面)の交付タイミング
両書面とも宅建士の記名が必要(2022年改正で押印廃止)
📋 この記事を読むとわかること
  • 35条書面(重要事項説明書)と37条書面(契約書面)の役割の違い
  • それぞれの交付タイミングと交付先
  • 宅建士の関与・説明義務の有無の違い
  • 記載事項の構成と両書面の重複・非重複項目
  • 2022年施行の電子化・押印廃止の最新動向

本記事は宅地建物取引士の実務知見に基づき作成しています(2026年4月時点)。

オフィスを賃貸契約する際、宅建業者から「重要事項説明書(35条書面)」と「契約書面(37条書面)」の2種類の書類が交付されます。名称は似ていますが、目的・タイミング・法的性質が大きく異なります。本記事で違いを整理します。

35条書面 vs 37条書面 — 役割と流れ 35条書面(重要事項説明書) 📅 契約成立「前」に交付 目的:契約するかの判断材料 交付先:借主(買主)のみ 宅建士による説明義務あり 契約締結 37条書面(契約書面) 📅 契約成立「後」に遅滞なく交付 目的:合意内容の確定・紛争防止 交付先:貸主・借主の両当事者 説明義務なし(交付のみ) ▲ 宅地建物取引業法第35条・第37条に基づく。詳細は必ず担当宅建士にご確認ください。
▲ 35条書面・37条書面の役割と流れ

1. 35条書面・37条書面とは

宅地建物取引業法(宅建業法)において、宅建業者が不動産取引に際して交付を義務付けられている書面です。両書面の根本的な違いは「目的」と「タイミング」にあります。


35条書面(重要事項説明書)37条書面(契約書面)
目的契約判断の材料提供契約内容の確定・紛争防止
タイミング契約成立「前」契約成立「後」遅滞なく
役割のイメージ物件のスペック・リスクの事前告知最終的な合意事項の書面化
交付先借主(買主)のみ貸主・借主の両当事者
宅地建物取引士のコメント

重要事項説明書(35条書面)は「この物件について知っておくべきこと」を説明する書類、契約書面(37条書面)は「双方が合意した内容の証明書」です。お客様からよく「どちらも似たような書類では?」と聞かれますが、35条は判断前・37条は決定後という時系列の違いが本質です。35条書面の説明で不明点があれば、必ず署名前に宅建士に確認してください。

2. 交付タイミングと交付先の違い

最も重要な違いは交付のタイミングと対象者です。

35条書面(契約前)

  • 時期:契約が成立する前(宅建業法上、説明なしでの署名・契約は禁止)

  • 交付先:買主・借主になろうとする者のみ(物件情報に詳しくない側への情報提供が目的)

  • 相手方が宅建業者の場合:説明は省略可能だが、書面の交付は必須

37条書面(契約後)

  • 時期:契約成立後、遅滞なく

  • 交付先:売主・買主(または貸主・借主)の両当事者(双方が合意内容を保持するため)

  • 例外:宅建業者が自ら貸主となる場合は37条書面の交付義務なし

⚠️ 賃借契約での注意点

媒介業者は、35条書面を借主に交付・説明する義務があります。37条書面は貸主・借主の両方に交付します。重要事項説明書への署名は「説明を受けた」という確認であり、内容への無条件同意ではありません。不明点は必ず署名前に確認してください。

3. 宅建士の関与と説明義務の違い

項目35条書面37条書面
宅建士の記名必要必要
説明義務あり(宅建士が口頭で説明)なし(交付のみ)
宅建士証の提示必須(説明時に提示)原則不要(請求時のみ)
交付者宅建士が説明しながら交付宅建士以外の従業員でも可
相手が宅建業者の場合説明省略可・書面交付は必須交付必須
宅地建物取引士のコメント

35条書面の説明時に宅建士証の提示を忘れると、宅建業法上違反となります。実務では「証明書を見せてください」と求めるお客様はほとんどいませんが、権利として請求できることは覚えておいてください。逆に37条書面は「確認のための書類」なので、内容をよく読んで保管することが重要です。

4. 記載事項の構成と違い

記載事項は「物件そのものの情報(35条中心)」と「契約の具体的な条件(37条中心)」に大別されます。

35条書面の主な記載事項(契約判断の材料)

  • 登記名義人・所有者の氏名、登記された権利の種類

  • 法令上の制限(都市計画法・建築基準法等)

  • 飲用水・電気・ガスの整備状況

  • 水害ハザードマップにおける所在地

  • 建物状況調査(インスペクション)の結果の概要

  • 石綿(アスベスト)使用調査の結果・耐震診断の内容(一定の物件)

  • 契約不適合責任に関する事項

  • 代金以外に授受される金銭(手付金等)の額および目的

37条書面の記載事項(合意内容の確定)

37条書面の記載事項は「必要的記載事項」と「任意的記載事項」に分かれます。

区分記載事項備考
必要的記載事項当事者の氏名・住所必ず記載

物件を特定するための表示必ず記載

代金・借賃の額、支払時期・方法必ず記載

物件の引渡し時期必ず記載

移転登記の申請時期売買・交換のみ
任意的記載事項敷金・礼金等の授受時期・目的定めがある場合

契約の解除に関する事項定めがある場合

損害賠償額の予定・違約金定めがある場合

契約不適合責任の内容定めがある場合

両書面の重複・非重複の整理

区分内容
37条のみ(35条不要)代金の支払方法、引渡し時期、移転登記の申請時期。契約者同士の合意で決まるため
35条のみ(37条不要)法令上の制限、登記された権利、ハザードマップ所在、インフラ状況。物件そのものの属性のため
両方に記載代金の額、契約解除のルール、違約金の定め、代金以外の授受金。判断材料かつ合意内容として重要
💡 混同しやすいポイント

「引渡し時期」や「移転登記の申請時期」は37条書面のみの記載事項です。これらは「契約して初めて決まること」であるため、35条書面(契約前の判断材料)には含まれません。この区別が宅建実務・試験において最も頻繁に混同されるポイントです。

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5. 電子化・押印廃止の最新動向

2021年成立・2022年5月施行の宅建業法改正により、書面交付の方法が大きく変わりました。

改正内容詳細
電子交付の解禁相手方の承諾を得た場合に限り、電磁的方法(電子メール等)による交付が可能に。35条・37条両書面に適用
押印の廃止35条・37条書面ともに宅建士の押印が不要に。記名は引き続き必要
宅建士証の提示(IT重説)ビデオ通話等によるオンライン重要事項説明(IT重説)でも、宅建士証の画面表示による提示が必要
💡 実務上の注意点

電子交付に切り替える場合、相手方(借主・買主)の事前の承諾が必須です(宅建業法・国土交通省制度上)。承諾なしに電子交付のみで済ませることはできません。紙交付を希望する場合は、その旨を仲介会社に伝えてください。

6. 状況別ネクストアクション

🎯 あなたの状況別ネクストアクション
重要事項説明を受ける前事前に35条書面のコピーをもらい、疑問点をリストアップ。説明当日に宅建士証を確認
説明内容に不明点がある署名前に必ず確認。「後で確認します」と言って署名を保留する権利がある
37条書面(契約書)を受け取ったら賃料・敷金・解約予告・原状回復条項を重点的に確認。退去まで保管が必須
電子交付を求められた場合承諾は任意。紙での交付を希望する場合は明示的に申し出ることができる

7. まとめ

35条書面(重要事項説明書)は「契約前のリスク開示」、37条書面(契約書面)は「契約後の合意証明」という役割の違いを押さえることが重要です。賃貸オフィス契約では、重要事項説明書の内容を十分に理解した上で契約書面に署名することが、後のトラブル防止につながります。不明点は必ず署名前に宅建士に確認してください。

よくある質問(FAQ)

35条書面と37条書面は同じ宅建士が作成・説明しなければなりませんか?

同一の宅建士である必要はありません。35条書面の説明を行う宅建士と、37条書面に記名する宅建士は別の人でも問題ありません。ただし、いずれも宅建士の記名が必要です。

重要事項説明書(35条書面)にサインしたら契約成立ですか?

いいえ。35条書面への署名は「説明を受けた」という確認であり、契約の成立ではありません。通常は契約書面(37条書面)の取り交わしによって契約内容が明確化されます(宅建業法上の契約成立要件は個別状況により異なります)。重要事項説明後に「契約しない」と判断することも可能です。

オフィス賃貸では35条書面の説明は省略できますか?

相手方(借主)が宅建業者の場合は説明を省略できますが、書面の交付は必須です。一般企業(宅建業者以外)が借主の場合は、宅建士による説明が必要です。

37条書面は紙でなくてもよいですか?

2022年5月以降、借主・貸主の承諾があれば電子交付が可能です。ただし承諾は任意であり、紙での交付を希望する場合はその旨を仲介会社に伝えてください。

退去時に37条書面(契約書)が見当たらない場合どうすればよいですか?

仲介会社または管理会社に再発行・写しの提供を依頼してください。原状回復・解約予告・敷金返還に関する条項の確認が退去時に必要になるため、契約書は入居中に必ず保管しておくことをお勧めします。

重要事項説明でよく問題になる項目は何ですか?

オフィス賃貸では、①原状回復の範囲(スケルトン返却か現状回復か)、②B工事の範囲と費用負担、③解約予告期間(6ヶ月前前後が多くみられますが、契約内容により異なります。当社実務経験より)、④賃料改定条項、⑤用途制限(飲食・物販不可等)がトラブルになりやすい項目です。説明時に必ず確認し、不明点は書面で回答を求めてください(当社実務経験より)。

参考・出典元

本記事の法令・制度に関する記載は下記の官公庁・行政機関等の公式情報を参考としています。

情報源資料・ページ名 / 参照内容
e-Gov 法令検索宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明)・第37条(書面の交付)35条書面・37条書面の交付義務・記載事項の法的根拠
国土交通省宅地建物取引業法関係(重要事項説明・書面交付制度の概要)35条・37条書面の実務上の取扱い・電子化対応の根拠
当社実務経験オフィス賃貸における重要事項説明のトラブル事例・確認ポイント株式会社アドマイアー(オフィサイト)の実務案件をもとにした2026年4月時点の傾向。個別案件は必ず担当宅建士にご確認ください。

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