公開日: 2026年03月14日

最終更新日: 2026年04月05日

スタートアップのオフィス戦略完全ガイド

スタートアップオフィスフェーズ別の選び方・人数別の面積目安・移転費用のリアルまで、賃貸仲介の現場視点で徹底解説します。読了目安:8分

スタートアップにとって、オフィスは単なる「固定費」ではありません。採用力・チームの熱量・投資家からの信頼を左右する成長戦略の一部です。

一方でオフィス移転のタイミングを誤ったり、面積計画を間違えたりすると、キャッシュフローを圧迫し成長スピードを落としてしまいます。本記事では実務レベルで解説します。

なぜスタートアップに「オフィス戦略」が必要なのか

リモートワークが普及した現在でも、スタートアップにとってオフィスは重要な経営資源です。主な理由は3つあります。

🎯

採用力を高める

優秀な人材は「どこで働くか」を重視します。デザイン性の高いオフィスは企業文化を視覚的に伝える採用ツールになります。

🤝

投資家・クライアントの信頼

成長フェーズに合ったオフィスを構えることで、事業の安定性と信頼性を示すことができます。

チームの生産性

対面コミュニケーションによるアイデア創出・意思決定スピード・チームビルディングは競争力に直結します。

【フェーズ別】スタートアップのオフィス選び

企業の成長段階に合わせて「箱」を変えていくのが基本戦略です。一般的な変遷は以下の通りです。

シードコワーキング〜5名
シリーズAセットアップ5〜30名
シリーズB一般賃貸30〜100名
シリーズC大型ビル100名〜
シード〜シリーズA

コワーキングスペース

  • 初期費用が安い
  • 即日利用可能
  • ネットワーク形成
  • 柔軟な拡張・縮小
創業期・5名以下に最適
シリーズA〜B

セットアップオフィス

  • 内装工事済み
  • 会議室付き
  • すぐ入居できる
  • 初期費用を大幅削減
今最も人気の形態
シリーズC〜

一般賃貸オフィス

  • レイアウト自由
  • 内装デザイン可能
  • 大規模フロア対応
  • ブランド表現
増床可能なビルを選択
💡

セットアップオフィスを選ぶべき理由

通常オフィスでは内装費に1,000〜3,000万円かかることもあります。セットアップなら初期投資を大幅に抑えつつ、スピーディな入居が可能です。

コワーキング vs セットアップオフィス 徹底比較

選択肢を迷う方が最も多いのがこの2択です。それぞれの特徴をすべての観点で比較しました。

比較項目🏢 コワーキング✨ セットアップ🏗️ スケルトン賃貸
初期費用◎ 数十万円〜○ 300〜800万円△ 1,500〜3,000万円
入居までの期間◎ 即日〜1週間○ 1〜2ヶ月△ 3〜6ヶ月
カスタマイズ性✕ ほぼ不可△ 一部可能◎ 完全自由
プライバシー△ 共用空間あり○ 専有空間◎ 完全専有
採用・ブランド効果△ 限定的○ 十分な効果◎ 最大効果
会議室△ 時間制・有料○ 専用あり○ 自由に設計
月額コスト(目安)5〜15万円/人3〜6万円/人2〜5万円/人
おすすめ人数〜10名5〜50名30名〜
おすすめフェーズシード〜シリーズAシリーズA〜BシリーズB〜C

スタートアップのオフィス面積目安(人数別)

オフィス計画で最もよくある質問が「何坪必要か?」です。一般的な目安は 1人あたり2〜3坪(執務スペース+会議室+共用部含む)です。

人数坪数目安㎡換算(参考)オフィス形態
5名10〜15坪33〜50㎡コワーキング〜セットアップ
10名20〜30坪66〜99㎡セットアップオフィス
20名40〜60坪132〜198㎡セットアップ〜一般賃貸
50名100〜150坪330〜495㎡一般賃貸オフィス
100名200〜300坪660〜990㎡大型ビル・フロア借り
⚠ フリーアドレス・リモート併用の場合最近はフリーアドレス制やリモートワーク併用により、1人あたり1.5坪程度で設計する企業も増えています。採用計画や出社率に合わせて試算しましょう。

オフィス移転でかかる費用

スタートアップが見落としがちなのが移転コストです。賃料以外にも多くの初期費用が発生します。

🏦
保証金(敷金)
賃料6〜12ヶ月
退去時に返金されるが大きな資金拘束
🔨
内装工事費
30〜80万円/坪
30坪で1,000〜2,400万円規模になることも
🪑
家具・什器
10〜30万円/人
デスク・チェア・ロッカーなど
💻
IT・ネットワーク設備
100万円〜
Wi-Fi・サーバー・配線工事など
📊

費用シミュレーション:30坪オフィスの場合

保証金(月60万円 × 10ヶ月)= 600万円 / 内装費(50万円 × 30坪)= 1,500万円 / 家具(20万円 × 20名)= 400万円 / IT設備 = 150万円。合計 約2,650万円 の初期投資が必要になるケースも。

なぜ今「セットアップオフィス」が増えているのか

近年、東京都心ではセットアップオフィスの供給が急増しています。背景には3つの要因があります。

💰

内装コスト削減ニーズ

企業が初期投資を抑えたいニーズが高まっている

スピード移転の需要

契約後すぐに入居可能で意思決定が速いスタートアップ向き

📈

スタートアップ増加

IT企業の急成長に伴い東京都心での需要が拡大

港区・中央区・渋谷区を中心に、セットアップ物件の数は年々増加しています。

エリア選びは採用・投資家印象・月次コストに直結します。東京主要エリアの坪単価相場と特徴を比較しました。

エリア坪単価目安相対コスト特徴・向いているスタートアップ
渋谷・恵比寿3.5〜6万円



IT・デザイン系。若手エンジニア採用に強い
虎ノ門・赤坂3.5〜5.5万円



大企業・官公庁連携。グローバル展開を目指す企業
六本木・麻布4〜7万円



外資系・投資家が多い。ブランド訴求最重視の企業
日本橋・茅場町2.8〜4.5万円



VC・金融機関が集積。フィンテック・BtoBスタートアップ
神田・秋葉原2〜3.5万円



コストパフォーマンス◎。エンジニア採用。アーリー期に最適
品川・五反田2.5〜4万円



交通アクセス優秀。コスパと立地のバランス型

🏙️ 渋谷IT集積

IT企業が集積し、スタートアップカルチャーが根づいたエリア。若い優秀な人材の採用に強みがある。

💼 日本橋金融・VC

VCやメガバンクが近く、資金調達を視野に入れたスタートアップに人気。落ち着いたビジネス環境。

🏛️ 虎ノ門大企業連携

再開発が進む注目エリア。大企業との連携・オープンイノベーションを目指す企業向き。

⚙️ 神田・秋葉原コスパ◎

都心へのアクセスが良く、賃料が比較的抑えられる。エンジニア採用にも強いエリア。

オフィス移転チェックリスト

移転を検討する際に確認すべきポイントをまとめました。クリックでチェックできます。

✅ 移転前に確認すべき10項目

  • 現在の従業員数と1〜2年後の採用計画を試算した
  • 必要坪数(人数 × 2〜3坪)を計算した
  • 初期費用(保証金・内装・家具・IT)の総額を試算した
  • 月次のキャッシュフローへの影響を確認した
  • セットアップ vs スケルトンオフィスを比較検討した
  • エリア(採用・投資家・クライアントへの影響)を検討した
  • 増床・移転オプションがある物件か確認した
  • 契約期間・途中解約の条件を把握した
  • 現オフィスの原状回復費用を把握した
  • 移転スケジュール(最低3〜6ヶ月前から動く)を計画した

よくある質問(FAQ)

スタートアップのオフィスは1人何坪必要ですか?

一般的な目安は1人あたり2〜3坪です(執務スペース・会議室・共用部含む)。フリーアドレスやリモートワーク併用の場合は1〜1.5坪で設計するケースも増えています。採用計画や出社率をもとに試算するのがおすすめです。

セットアップオフィスとスケルトンオフィスの違いは何ですか?

セットアップオフィスは内装工事済み・家具付きで入居できる物件です。スケルトンは内装が何もない状態で引き渡されるため自由にデザインできますが、内装工事に1,000万円以上かかるケースがあります。シリーズA〜Bのスタートアップにはセットアップが一般的におすすめです。

オフィス移転のタイミングはいつが良いですか?

現オフィスの定員の80%に達したタイミングが移転検討の目安です。物件探しから入居まで最低3〜6ヶ月かかるため、早めに動くことが重要です。資金調達(シリーズラウンド)のタイミングと合わせて移転するケースも多いです。

30坪のオフィスを借りると初期費用はいくらかかりますか?

スケルトン物件の場合、保証金・内装・家具・IT設備を合わせると2,000〜3,000万円の初期費用になるケースがあります。セットアップオフィスであれば内装費を省けるため、500〜1,000万円程度まで圧縮できる場合があります。正確な見積もりはお気軽にご相談ください。

スタートアップにおすすめのオフィスエリアはどこですか?

目的によって異なります。採用重視なら渋谷・恵比寿VCや金融機関との連携なら日本橋・兜町コストを抑えたいなら神田・秋葉原がそれぞれ人気です。虎ノ門は再開発が進み、大企業との連携を目指すスタートアップに注目されています。

コワーキングスペースから専用オフィスへ移るべきタイミングは?

従業員が10名を超え始めたころ、または機密情報の取り扱いや採用面談の頻度が増えてきたタイミングが目安です。シリーズAの資金調達後に専用オフィスへ移行するケースが最も多く見られます。

オフィスの保証金(敷金)はどれくらい必要ですか?

東京都心では賃料の6〜12ヶ月分が一般的です。月額賃料が60万円の場合、600〜720万円の保証金が必要になります。退去時に返金されますが大きな資金拘束となるため、資金計画に必ず組み込んでおきましょう。

まとめ|オフィスは「コスト」ではなく「戦略」

スタートアップにとってオフィスは、採用・ブランド・生産性を左右する重要な経営資源です。成長フェーズに合わせて面積・立地・契約条件を最適化することで、企業の成長スピードを大きく高めることができます。

📌

本記事のポイントまとめ

① フェーズ別:シード→コワーキング、シリーズA〜B→セットアップ、シリーズC〜→大型ビル / ② 面積:1人あたり2〜3坪が基本目安 / ③ 費用:30坪で初期2,000〜3,000万円になるケースも / ④ セットアップ物件が増加中でスタートアップに有利な選択肢


矢冨 裕敏
矢冨 裕敏
この記事を書いた人
矢冨 裕敏
課長 / 不動産コンサルタント・アドバイザー
宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者・敷金診断士

不動産業界16年のキャリアを持ち、宅建士・賃貸管理士・管理業務主任者・敷金診断士など8種の専門資格を保有。オフィスビルの収益改善・プロパティマネジメントから相続財産評価まで多角的な視点で不動産の価値最大化を支援。オフィサイトでは不動産コンサル・オーナー向け情報に関する記事の執筆・監修を担当。

不動産コンサルティングプロパティマネジメント収益改善
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人数別の適正坪数・エリア別の供給状況・セットアップオフィスを含めた選択肢をもとに、戦略的なオフィス選定をサポートします。

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