東京オリンピックを控えどう変わっていくのか2019年の賃貸オフィス今後の賃料推移

2019年9月30日

■テナント需要はいたって旺盛

2019年3月期における東京エリアのオフィスビルの空室率は従来から引き続き1%を下回る0.6%と低調に推移しており、堅調な状態が続いています。
2019年のオフィスビルの新規供給状態を見ると、2018年の25万坪、2020年の30万坪に比べ2019年度初めは20万坪と抑えられていますが、テナント企業は強い関心を示しており、2019年に竣工したばかりのオフィスビルは大半が入居テントの内定が決まっている状態です。
耐震性に優れ、最新の設備やIT環境などが整っていることからも人気が高くなっていますが、既に2020年以降に竣工するビルを検討する企業も増えており、需要が旺盛なことから、これまでのような上昇傾向は落ち着くものの、賃料が大きく下落することはないでしょう。

■新築ビルへの大規模移転が続く

多くの企業が新築ビルへこぞって移転する大規模移転に伴い、既存のビルでもテナントの満室状況が続いています。
現在のテナントが新築のオフィスビルに移転すれば、数千坪単位で既存ビルの空室が生じるわけですが、現テナントの移転が決定してから数ヶ月の間に同じオフィスビル内のテナントが増床を希望したり、外部からの統合移転があったりするなどで即入居テナントが決まる傾向が見られます。
築年数の経過した既存ビルであっても、1年以上先の空室のテナントが内定するなど新築や築浅のオフィスビルだけでなく、東京エリアのオフィステナントの需要は堅調です。
現在のオフィスビル内で増床ができずに分室ニーズが生じたとき、あるいは耐震補強などのために自社物件の建て替えに伴い仮の本社移転をはじめ、現代のワークスタイルに即してコワーキングスペースを提供する企業の旺盛な新規出店需要が増大しており、新旧問わず、空き室は減少傾向にあります。

■全体的に見ると成約賃料の上昇は鈍化傾向に

もっとも、これ以上の大幅な空室率低下は見込めないため、2018年12月期からの賃料上昇率は1%未満にとどまりました。
働き方改革や人材確保のために職場環境の改善を目的としたオフィスの移転やIT企業を中心に爆発的な増床ニーズがいまだ見られるものの、高い賃料水準のビルを中心に賃料決定までの条件交渉のスピードがやや遅くなっています。
これが意味するのは、条件交渉に時間を要しており、オーナーや不動産会社から提示される高い賃料に対してすぐにOKの返事が出なくなっていることを示しています。
オーナーの側でも一部には将来の新規供給や二次空室を見据えて賃料交渉を行う動きも見られ、2011年冬から上昇傾向にあった東京のオフィスビルの賃料相場はようやく一休みする段階に入ったかもしれません。

■2020年に大型供給を迎える東京の賃貸オフィス市場

2019年はやや鈍化傾向が見られてきたものの、これまで上昇を続けてきた東京の賃貸オフィス相場も、2020年の大型供給を控えようやく調整局面に入ると予想されています。
その要因として2019年10月に予定される消費税の増税をはじめ、FRBの金利引き上げや米中貿易摩擦による米国経済の2019年後半からのスローダウン、2020年オリンピックが終了することで熱気が一段落することが予想されるからです。
東京のオフィスビルの新規供給は2019年に20万坪、2020年には30万坪の計50万坪が予定され、この面積はわずか2年で東京最大のオフィスエリアである丸の内・大手町のオフィス面積の約7割にも匹敵します。
消費税増税の影響がどこまで出るかは未知数ですが、景気の減速が始まるとすれば、オフィス需給も緩和し2019年後半にも賃料がわずかに下落し始めると分析するリサーチャーもいます。
数値での予測では2018年の2万2040円/坪に対して、2020年には2万1730円/坪という1.4%の下落が見込まれており、2019年はその過渡期にある踊り場段階と予想されるのです。

■銀座の高級オフィスエリアは今後も高値が続く予想

銀座エリアにおけるラグジュアリーブランドの出店は訪日観光客の増加も相まって、2018年から伸長を続けています。
高級ブランド品の売り上げをけん引している訪日外国人観光客は、2020年のオリンピック開催も見据え、今後も増加傾向にあります。
そのため、路面店舗の賃料は2020年末までの2年間で約8%上昇する見込みです。
一方でECマーケットの市場拡大が続き、実店舗の在り方に変化しており、商品販売よりもショールーム型のスタイルが増えてきました。
ショールーム型店舗では視認性が高く、歩行者の量が多いハイストリートの路面店を希望するのが基本です。
ショールーム型の店舗そのものを広告・宣伝の場と位置付けることで、広告宣伝費を出店費用や賃料に充てるケースも少なくありません。
そのため希望の立地にテナントを借りることができるのであれば、多額の賃料を負担することも厭いません。
ラグジュアリーブランド同士が競合することで、テナントの賃料がいっそう上昇する可能性もあるのです。


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